2006.03.03 金曜日 15:51
<フィギュア>イナバウアー 静香の究極美、新しい名を
<フィギュア>イナバウアー 静香の究極美、新しい名を
トリノ五輪フィギュアスケート金メダリストの荒川静香選手の得意技として今や流行語にもなっている「イナバウアー」。エビ反りの技と思われがちだが、本当は上体を反らさない。荒川選手の金メダルを機に「アラカワ・イナバウアー」「アラカワスペシャル」と命名しては、との声も出始めた。【野口美恵】
「イナバウアー」が誕生したのは1957年、米コロラドでの世界選手権。西ドイツ(当時)代表のイナ・バウアー選手(65)が披露したことから命名された。57~59年に西ドイツ選手権三連覇。引退後は女優に転身し映画にスケーター役で出演。現在はデュッセルドルフ近郊でジュニアの競技会「イナ・バウアー杯」を開催している。
元祖イナバウアーは足を前後にずらして、足先を180度に開き横に移動する足技。ジャンプやスピンのつなぎとして使う選手が多く、まず得点にならない。実はトリノ五輪でも女子2位のサーシャ・コーエン選手(米国)、男子3位のジェフリー・バトル選手(カナダ)らが取り入れたが、荒川選手のイナバウアーが目立ち、あまり気付かれなかった。
荒川選手は高校時代、「ただ滑るより、反った方がきれいじゃないかな」と思い、背中を反らせる練習をして、今のように頭が下になる状態まで曲がるようになった。独自性が強く見た目も美しいため、演技全体を評価する「つなぎ」「振り付けの独創性」「スケーティング技術」などの得点がアップ。さらに、直後に3連続ジャンプを跳ぶため、ジャンプの評価も上げているのが特徴だ。
57年の世界選手権に日本代表として出場してイナバウアーのお披露目に立ち会い、現在は国際スケート連盟の技術委員を務める平松純子さんは「荒川さんのイナバウアーは価値が高い。グッと反らすだけでなく、バウアーさんよりエッジを深く倒して難度を高くアレンジしている。新しくアラカワ・イナバウアーと呼んでいいのではないでしょうか」と指摘。また、日本スケート連盟インストラクターの坂田清治さんも「渡部絵美、ルシンダ・ルー(スイス)ら有名選手も背中を反らすことを試みたが、荒川選手のように出来なかった。アラカワスペシャルとも言える」と語る。
細かく分ければ100近くある技名の中でも、人名を冠した技は五つのみ。1882年にアクセル・パウルゼン選手(ノルウェー)が考案したアクセルパウルゼンジャンプに始まり、デニス・ビールマン選手(スイス)が1977年に成功させた、両手で足を頭上に持ち上げるビールマン・スピンが最後。
ブログで頻繁に使われた言葉をランキングするサイト「兆」によると、3日現在、荒川選手関連が1~6、10、14位を独占。「アラバウアー」「アラカワバウアー」などの新語づくりがブログでブームになっている。
正式な新技として命名されるには、国際スケート連盟の技術委員会で承認されなければならない。「もっと評価されるべき大きい技」と絶賛する平松さんら技術委員が提唱すれば、29年ぶりの記念碑的な新技に荒川選手の名が刻まれることも夢ではなさそうだ。
トリノ五輪フィギュアスケート金メダリストの荒川静香選手の得意技として今や流行語にもなっている「イナバウアー」。エビ反りの技と思われがちだが、本当は上体を反らさない。荒川選手の金メダルを機に「アラカワ・イナバウアー」「アラカワスペシャル」と命名しては、との声も出始めた。【野口美恵】
「イナバウアー」が誕生したのは1957年、米コロラドでの世界選手権。西ドイツ(当時)代表のイナ・バウアー選手(65)が披露したことから命名された。57~59年に西ドイツ選手権三連覇。引退後は女優に転身し映画にスケーター役で出演。現在はデュッセルドルフ近郊でジュニアの競技会「イナ・バウアー杯」を開催している。
元祖イナバウアーは足を前後にずらして、足先を180度に開き横に移動する足技。ジャンプやスピンのつなぎとして使う選手が多く、まず得点にならない。実はトリノ五輪でも女子2位のサーシャ・コーエン選手(米国)、男子3位のジェフリー・バトル選手(カナダ)らが取り入れたが、荒川選手のイナバウアーが目立ち、あまり気付かれなかった。
荒川選手は高校時代、「ただ滑るより、反った方がきれいじゃないかな」と思い、背中を反らせる練習をして、今のように頭が下になる状態まで曲がるようになった。独自性が強く見た目も美しいため、演技全体を評価する「つなぎ」「振り付けの独創性」「スケーティング技術」などの得点がアップ。さらに、直後に3連続ジャンプを跳ぶため、ジャンプの評価も上げているのが特徴だ。
57年の世界選手権に日本代表として出場してイナバウアーのお披露目に立ち会い、現在は国際スケート連盟の技術委員を務める平松純子さんは「荒川さんのイナバウアーは価値が高い。グッと反らすだけでなく、バウアーさんよりエッジを深く倒して難度を高くアレンジしている。新しくアラカワ・イナバウアーと呼んでいいのではないでしょうか」と指摘。また、日本スケート連盟インストラクターの坂田清治さんも「渡部絵美、ルシンダ・ルー(スイス)ら有名選手も背中を反らすことを試みたが、荒川選手のように出来なかった。アラカワスペシャルとも言える」と語る。
細かく分ければ100近くある技名の中でも、人名を冠した技は五つのみ。1882年にアクセル・パウルゼン選手(ノルウェー)が考案したアクセルパウルゼンジャンプに始まり、デニス・ビールマン選手(スイス)が1977年に成功させた、両手で足を頭上に持ち上げるビールマン・スピンが最後。
ブログで頻繁に使われた言葉をランキングするサイト「兆」によると、3日現在、荒川選手関連が1~6、10、14位を独占。「アラバウアー」「アラカワバウアー」などの新語づくりがブログでブームになっている。
正式な新技として命名されるには、国際スケート連盟の技術委員会で承認されなければならない。「もっと評価されるべき大きい技」と絶賛する平松さんら技術委員が提唱すれば、29年ぶりの記念碑的な新技に荒川選手の名が刻まれることも夢ではなさそうだ。